オントロジー設計
概念の定義と概念間の関係を明示的に設計する活動。計算資源が無限になっても消えない、意味の設計としてデータ設計の核心に残るもの。
なぜオントロジー設計が必要か
「売上とは何か?」という問いを考えてみる:
- 返品を含むのか?
- 税込みか税抜きか?
- キャンセル前の仮売上を含むか?
これは計算量の問題ではなく、概念の定義の問題だ。どんなに計算資源が増えても、「売上」という概念の意味を定義しなければ、データを正しく集計できない。
スキーマ設計との違い
| 種類 | 内容 | 消えるか? |
|---|---|---|
| スキーマ設計 | テーブル構造、正規化、インデックス | 計算制約が消えれば大部分が消える |
| オントロジー設計 | 概念の定義、概念間の関係、境界 | 計算制約に依存しない。残り続ける |
計算資源が無限になれば「どう保存するか」は意味を失う。しかし「何を意味するか」は残る。
二層構造
| 層 | 内容 | AIの適性 |
|---|---|---|
| 認知的層 | 概念の整理、矛盾の検出、最適な構造の発見 | 人間より優れる可能性がある |
| 規範的層 | 「何をもって正しいとするか」の価値判断・利害調整 | 知性だけでは解けない |
「売上に返品を含めるか」は知的能力の問題ではなく、営業部門と経理部門の利害調整の問題だ。規範的層はAIが知性の観点だけでは解決できない。
ユビキタス言語との関係
Domain-Driven Designのユビキタス言語は、ドメインエキスパートと開発者が共有する語彙体系を作る実践であり、オントロジー設計の一形態と捉えられる。
共有知の設計として
複数の主体が横断的にデータを分析するには、共通の語彙と意味の合意が必要だ。オントロジー設計は個人ではなく集団の「共有知」を設計する活動でもある。
認知的距離との関係
共有オントロジーの欠如(「売上とは何か」の定義が部門間で異なる)は、認知的距離の典型例。概念定義の不一致はスキーマの方向の不一致であり、フィードバックが着地しない状態を生む。オントロジー設計は認知スキーマを組織横断で揃える活動。
関連
- 認知的距離 - 概念定義の不一致が距離の源泉
- Domain-Driven Design
- ユビキタス言語
- Bounded Context
- 仕様の多義性
- プリンシパル・エージェント問題