VASP
暗号資産(仮想通貨)に関連するサービスを提供する事業者の総称。FATF(金融活動作業部会)が定義した国際的な規制用語。
定義
VASPは以下のサービスを提供する事業者を指す:
- 取引所: 暗号資産と法定通貨、または異なる暗号資産間の交換
- カストディ: 顧客の暗号資産や秘密鍵の保管
- 送金サービス: 暗号資産の送金・決済
- 発行体: ステーブルコインやその他トークンの発行
- その他: ICO(イニシャル・コイン・オファリング)プラットフォームなど
規制要件
KYC/AML
VASPには、伝統的な金融機関と同様のコンプライアンス義務が課される:
- KYC (Know Your Customer): 顧客の本人確認
- AML (Anti-Money Laundering): マネーロンダリング対策
- CFT (Combating the Financing of Terrorism): テロ資金供与対策
トラベルルール
FATFの「トラベルルール」により、VASPは一定額以上の暗号資産送金において、送金者と受取者の情報を相手方VASPに送信する義務がある。
例:
- 送金者の氏名、住所
- 受取者の氏名、住所
- 取引額
ステーブルコインとの関係
GENIUS法により、ステーブルコインの規制枠組みが整備されたが、興味深い抜け穴がある:
- 発行体: ホルダーに金利を支払うことは禁止(証券の定義の問題)
- VASP(取引所): 「報酬」という形でユーザーに利回りを提供することは禁止されていない
つまり、発行体自身は金利を払えないが、取引所が間接的に金利相当のインセンティブを提供することは可能である。
主要なVASP
グローバル取引所
- Coinbase
- Binance
- Kraken
- Gemini
ステーブルコイン発行体
- Tether (USDT)
- Circle (USDC)
- Paxos (PYUSD, USDP)
伝統的金融機関の参入
- PayPal: PYUSD(Paxosと提携)
- SoFi: SoFiUSD(銀行発行ステーブルコイン)
規制の地域差
VASPの規制は国・地域によって大きく異なる:
厳格な規制
- 米国: 州ごとのライセンス(BitLicense in NYなど)、連邦レベルの規制
- EU: MiCA(Markets in Crypto-Assets)規制
- 日本: 資金決済法、犯収法に基づく登録制
緩やかな規制
- 一部の新興国やタックスヘイブン
- 規制の不確実性が高い国
金融包摂との関係
VASPは金融包摂を進める重要な役割を果たす:
- 銀行口座を持たない人々へのサービス提供
- 国際送金の低コスト化
- ステーブルコインによる貯蓄手段の提供
一方で、過度なKYC/AML規制は、金融包摂を阻害する可能性もある(身分証明書を持たない人々が排除される)。
資本流出の規制
新興国政府にとって、VASPは資本流出の規制対象となる:
- VASPを通じた自国通貨からステーブルコインへの交換を制限
- VASPのライセンス要件を厳格化
- 国境を越えた暗号資産送金の監視
ただし、P2P(個人間)取引やDEX(分散型取引所)を通じた取引は、VASPを経由しないため、規制が困難である。